2017年04月10日

リスパダール

昔、昔、10年位前に私が別の施設で関わった認知症と診断された方の事例のお話。

男性入居者Qさんは要介護3.ADLはほぼ自立も突然激怒し入居者及び職員に大声を上げたり蹴り上げようとしたり、殴りかかろうとしたりも。入れ歯がカタカタ音を立てたときは、危険モードに入る合図。
職員に向かっていき、自身の履いているスリッパを右手に持ち「この野郎」と振りかざそうとします。時には実際に威嚇だけではなく、職員の頭にスリッパがクリーンヒットする事もたびたび。

他の入居者の安心安全な生活が脅かされそうな場合が想定されるため、「退去」を検討されそうなケースでもありました。

恐怖で職員も、他の入居者も委縮し、「迷惑者」として接するように。

しかしながら、新しい認知症ケアの基本である、『BPSDの発生要因の大半は環境要因』との観点から、環境要因の大きな因子であるQさんにとっての「介護職員」の関わり方に検討の余地がないかを分析してみることに。


Qさんへの日々の暮らしの中での職員の関りを一斉点検、会話もすべて記録し1週間分を検証してみると、面白い結果に。

介護職員の声掛けを時系列で読むと、穏やかに過ごす入居者への言葉かけと明かな違いが。

決してQさんと関わっていないことはないのですが、関わって話している内容が、

おはようございます。良い天気ですね。ごはんですよ。トイレに行きましょうか。お風呂ですよ。ごちそうさまでした。

などしか職員は声を掛けていなかった事に。

いつ怒り始めるかわからない恐怖からか、しゃくし定規な対応しかしていないことが明らかに。
また、起こり始めたときも、どうやって怒りを抑えようか、なんて言って怒りを抑えようかを考えた対応しかしていなかったことが明らかに。

親しく、安心して、落ち着ける人、になる、いわゆる「なじみの関係」づくりのための関わりが少なかった事が反省として挙げられました。

どうしても「厄介者」として口には出さないが無意識にそのようなエネルギーを発していたことにも気づき、その負のエネルギーが他の入居者の方にも伝染し、他の入居者にとってもQさんが「厄介者」にみえてしまうかかわりを「介護支援する」職員がしていたことが反省点では、と仮説を立てることに。

穏やかな入居者には、しゃくし定規な定型句だけでは会話しておらず、明らかな違いがあることをまずは認識し、「なじみの関係」になるための関わりを行う事を支援方針として、Qさんの思いを聴くこと、からスタートしてみることに。

関係づくりに集中する期間を1週間と定め、根気よくその間は意識して対応してみると、6日目には表情が穏やかになり劇的な変化が出てきました。

当時、『こんなに急に怒鳴るなら薬で調整する必要があるのでは』との、意見や『退去しないとほかの入居者に迷惑がかかる、いづれ大事故になる』などと職員から意見が出たりもしました。

【リスパダール】

これを使えたらどれだけ現場が楽になるか・・・

しかし、現場職員より、『薬に頼るのはまだ早いんじゃないだろうか、薬は最後の手段として、介護職としてできることをすべてやってからでもよいのでは』との声が上がり、多くの方々の賛同を得たのが、大きなことだったように。

心的、社会的、環境的、身体的要因にアプローチしても、介護は万能ではないため、薬の力でのアプローチも当然必要な場面は間違いなくあります。
しかし、自らのサービスの検証をせずに、とかく「不穏だから」と、一言でなんでも薬漬けにする、いわゆる魔の3ロック状態を作り出すことは、現場の雰囲気でそちらに舵を取ってしまう事も簡単にできやすい。

だからこそ、日頃の介護支援に対する「考え方」「方針」「理念」という道しるべになるものが大切になってきます。

ふと、そんなことを思い出したりしました。


posted by 管理者 at 13:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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