2017年04月11日

私、認知症になっちゃった

「子供たちはどこにいったんだろうか」

事務室にて縫物をしているQさんは10分おき、もしくはその問いの解を聞いたものの数分で同様の質問を投げかけてくる。

「あら、やださっきも聞いたわよね。ごめんなさいね、私ボケちゃってるから」
「どうしてこんな風になっちゃったのかしらね」

このやり取りを本日これまで多分30回以上繰り返している。



「私が悪いんじゃなくて、頭が悪いからしかたがないの」

本人にとって切実な問題。記憶が抜け落ちるという一大事に、都度都度不安にさいなまれ、欠落してしまった記憶をつなぎ合わせようと必死な様子が、この回数に表れている。

記憶が抜け落ちるという、経験をしたものでなければこの恐怖はわかりずらいかもしれない。

「あ、そうかい、なら、心配いらないね」
「最近、何回聞いても忘れちゃう」
「認知症だね私」
「治る薬あるかしら」

認知症の中核症状である、記憶の障害。

自身では「認知症」であると自ら告白するが、決して「認知症である」という事を受容しているわけではなく、自嘲気味に、認知症ではないと思っている自分が、「認知症である」と自らを守るために単に表現しているに過ぎないことがわかる。

「本気にしないでよ」と笑顔を見せる。

『(いえいえ、本気で認知症だと、認識してますよ)』

針を操る慣れた手先だけが昔も、今も変わらないものとして、変わってしまっている自分をより鮮明にさせているよう。


「いつも『さっきも聞いた』って言われるの、本当に参っちゃうわよね」

本人にとって聞く相手を困らせようと思って聞いているわけではない。
本気で、数分前の記憶がない事で事実とのギャップを埋めようと必死になっている。
つじつまを合わせようと、無理なストーリーを作ろうとしたりも。

必死で頑張るQさんに、雑な対応はできない。


今、約50回目くらいの質問に、一番困っているのは職員ではなく、本人自身なんだと。
posted by 管理者 at 21:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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