2019年03月26日

注視義務違反?ドーナッツによる窒息?食事形態確認義務違反?

長野県安曇野市の特別養護老人ホームで2013年12月12日、入所者の女性Kさん(当時85歳)に誤ってドーナツを食べさせ、その後死亡させたとして、「業務上過失致死罪」に問われた准看護師Yさん(58)に対し、長野地裁は3月25日、検察求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡した。弁護側は即日控訴した。

おやつのドーナツを食べたKさんが意識を失い、1カ月後に亡くなったことで、Y准看護師さんが業務上過失致死罪で起訴された。

判決によると、Y准看護師は13年12月12日、食堂でKさんにおやつを配膳する際、食べ物を丸のみにする傾向があるためゼリーを出す、との引き継ぎ資料の確認などを怠ってドーナツを提供。女性に窒息を起こさせ、約1か月後に低酸素脳症などで死亡させた、との罪。

 公判では、弁護側が無罪を主張し、女性の死因や、Y准看護師の過失の有無が争われたが、裁判長はおおむね検察側の主張に沿って罪を認定。
入所者の食事介助にあたる以上、食べ物に関する引き継ぎなどを確認する注意義務があったと判断した。

一方、介助が必要な入所者が他にも多くいたことや、職員間の情報共有体制も不十分だったとして、「責任がすべて被告にあるとは言い難い」とした。



この裁判結果は、ニュース記事だけではどうも中身が見えてこない。

それゆえに、不思議な判決、違和感、そして介護現場への、とりわけ介護・看護職業務への萎縮を産むのではとの業界内でのざわつきがおきたニュース。


つい先日も、「ドーナッツ」とのキーワードでは、愛知県安城市で2013年3月22日、重度の知的障害のあった当時28歳の男性利用者が障害者支援施設を抜け出し、近くの商業施設に陳列してあったドーナツを大量に口に詰め込み窒息死した死亡した事故において、
遺族が施設を運営する社会福祉法人に約7200万円の賠償を求めた訴訟の判決が2月22日にあったばかり。

事故後、法人側は遺族に1800万円の支払いを申し出たが、遺族側は「同世代の健常者に対する死亡賠償金の4分の1にも満たない」と折り合わなかった。
事故は施設の安全配慮義務違反が原因として提訴し約7200万円の賠償請求を。
施設側は男性利用者が施設を抜け出すのは予測不可能などと請求棄却を求めていた裁判。

この結論は、「施設の職員が扉を開けたことを示す客観的証拠がないうえ、担当の職員が目を離したのは数分ほどで、注意義務に違反したとは言えない」として訴えを退けた。

ごご遺族ご家族は「施設が安全だと思い預けているのに、責任が認められなかったのは納得できません。『障害者は外に出て行って死亡してもしかたない』と言われているように感じました」と話し、控訴する考えを示された。

このニュースは民事裁判。
両社の紛争に対して最終的にお金で解決する事が多い。そして民事は訴える相手は誰でも良い。
この場合は法人であったり、施設担当介護職員であっても。

但し、このニュースでは何か「犯罪」にあたる事が認められるとして、起訴された様子はない。あくまでも「民事」。






しかし、冒頭の、准看護師Yさんの裁判は、「刑事事件」として、何らかの犯罪に当たる事が認められるとして刑罰が決められる裁判。
今回の場合は、「業務上過失致死罪」が適用されるとして20万円の罰金刑となった。禁固や懲役ではなく、罰金刑。


仕事で運転中に歩行者をはねて死なせてしまった場合など、明らかに因果関係があるなら別だが、今回の事件は、

介護職員の補佐として、准看護師が現場に手伝いに行き、誤嚥の恐れが無いとされているKさんに背を向ける形で、
他の食事全介助を要する入居者のおやつの食事介助をしていた最中に、
他の介護職員が意識を失ってぐったりしているKさんを発見、

その後、すみやかに職員や救急隊が救命措置を行い、病院に搬送されたといった顛末のよう。


入居者のADLや危険予測、そして食堂のテーブル配置上の都合など様々な要因があり「ベスト」が何であるのかは不明であるが、

一職員、ここでは准看護師個人の責任として起訴するという事に何らかの違和感を覚える。

施設の管理者である施設長や、法人の理事長であるならばまだわかるが、最近のニュースの虐待暴行事件のように明らかにその利用者に対して暴行を働いたかのようなことが無いにもかかわらず、「被告人」と決めつけてしまう事に、検察側、世間一般での介護現場への理解不足が大きいように思えた。


長野県の民医連さんの資料のみの情報でしかない為、一方向での情報で判断はできにくいが、不思議さが際立つ。


今回の事件は社会的な悪性が高い事か・・・

そして民医連さんの資料記載による、そもそも「窒息ではなかった」との記述もよくわからない。

当時の救急搬送先の医師は「直接の死因は、脳に一定時間酸素がいかなかったことによる低酸素脳症。来院時は心肺停止状態で、その原因は、窒息以外にも脳梗塞か心室細動が考え得る。脳梗塞の確率が最も高いと考えている」(特養あずみの里業務上過失致死事件裁判で無罪を勝ち取取る会 あずみの里裁判パンフ2018年11月作成 P17より抜粋)といている。

窒息の場合には、いわゆる気道に異物が詰まった際の「チョークサイン」等苦しむ動作があるのが一般的だが、今回は急に発生したこと。
また、そして職員及び救急隊員、そして搬送先の職員もが「窒息」との思い込みで、他の検査が行われづらかったとの背景があったよう(民医前述勝ち取る会作成資料による)。


検察は、訴因を、@ドーナッツを誤嚥させた→Aゼリーなのにドーナッツを配ったとの形態確認義務違反と。

そして、注視義務違反の開始時期を@Y准看護師がテーブルに着席した時から→AY准看護師がKさんにドーナッツを配った時から、と変更。

ドーナッツを配った時からしっかりと見張っておかなかった、そして食事形態を把握せずに配って、食べさせてしまったのは罪があるでしょう。

というのを根拠に「業務上過失致死罪」を成立させようとした流れ。

その場にいないのでなんとも言えないが、

当施設で考えた場合に、

立ち上がり等転倒リスクのある入居利用者に背を向ける介助はそもそもあり得ない。
職員は全体を見渡す事が出来る配置に着くことが前提。出来ない場合は、こまめに見える位置に動き確認する。
誤嚥の恐れがある方には食べる様子を観察できる位置に。
むせ込む方には、食事形態を変更したり、小分けにしたりなど一気に詰め込まないような工夫を実施。
おやつであっても、食札はつけ、食事形態を間違わないようにする。

という事を行う。



前述の資料によると食堂テーブルの配置がなにやら分散されており、しかも職員が17名の入居者に対して、看護職員と介護職員の合計2名であった事は、安全確保のために全体を見やすい状況であったとは言い難く、介護するには難しい環境要因であったと率直に思えた。
この状況で、ただ1名の准看護師のみに責任を負わせるのはどうかと思う。施設全体の問題である。


ただし、施設の中で起こりえる「介護事故」の中で、窒息が疑われる場合は、スピードが大切。
様子観察して救急車を呼ぶのが遅くなると死の確率が高まる。

また、最善を尽くしても、助からない事が多いのも窒息である。

お正月に家でお餅を食べていて、家族が側にいて窒息しているのを発見したとしても助からない場合がある。
その家族がもしも医療関係者であっても同じであろう。


逆に、この事件では、搬送後にすぐに亡くなったわけではなく1か月後の話。
やれるだけの救命処置を施した形跡が伺われるのではないだろうか。

これらの前提は、窒息の場合であるが、すぐに気づけなかったのだとしたらすぐに絶命していたのではと思ってしまう。

そしてご遺族の方も、施設側と示談されているとの事であり、民事において施設側に賠償を求めているわけではないよう。

検察がむりやり罪を作りそして騒ぎを大きくしているのでは、と思ってしまう。



しかしながら、これらは一方向からだけの情報を基にしたお話。
検察側からの詳しい情報などがあればこの違和感だらけの裁判の背景が少しでもわかるのではと思う。


最近は、介護現場における嫌な思いのさせるニュースばかりでホント嫌になっちゃう・・・


ただ、こういった介護上での裁判の場合、「死」に至らしめない方法、の代替案を示してほしい。
何がベストであれば、致死とならなかったのか。

言うのは簡単。もしも罪をあえて問うのだとすると、
全国の施設に対して介護報酬を低くさせ、多くの介護人員を配置させることをしなかった、
指定監督責任のある国に対して賠償を求めるくらいの事をしないものかと・・・
posted by 管理者 at 21:54| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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